田口村事件 ~ 日本共産党員による警察官への集団暴行事件

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昭和27年02月06日 衆議院 法務委員会
[009]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
そこで今度はひとつ長野県の事件の内容を聞きたいのでありますが、新聞の報道でも明らかになつておりますように、また地警がそれを認めておりますように、今回長野県に起りました警官集団暴行事件というものは、国会でもときどき問題になりました長野県と群馬県の県境である。要するにわれわれから言わしめますと、共産活動に対する盲点とまで指摘できる地点に起つた事件のように考えるのであります。この事件は新聞の報道で一部知ることができるのでございますが、いかなる動機によつて発生し、いかなる暴行が行われ、現在いかようなる段階に達しているのか、これを今少しくお知らせを願いたいのであります。

[010]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
ただいまお尋ねの長野県におきまする暴行事件についてお答えを申し上げたいと存じます。2月3日の午後10時30分ごろの出来事でございますが、長野県の南佐久郡田口村におきまして、警察官の不審尋問に対しまして、多数の暴徒がこれを取巻きまして、暴行を加えた事件が起つたのであります。詳細なる点は目下現地に対して照会をいたしておりますが、約13名程度の者が警察官に対して暴行をいたしたと認められておるのであります。そのうち氏名のはつきりいたしました容疑者8名につきまして、令状を執行して逮捕いたしましたが、そのうち1人は容疑が薄いということでこれを釈放いたしております。目下これらについて取調べを進めておるような状況であります。

暴行を受けました警察官は4人でありますが、そのうち2人はかなり重い傷を受けておるわけであります。1人はみけんに骨膜に達するほどの裂傷を受け、1人は鼻の部分、あごの部分を強打されまして、血みどろになつておつたというような状況で、そのほか倒れたところを踏んだりけつたりしたような痕跡も認められておるのであります。他の2人は軽傷だというふうに聞いております。

[011]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
8名の逮捕を見たということで、まことに喜ばしい次第でございますが、これらの逮捕された人間は職業的であるということが新聞で報道されておりますが、党籍は持つておりましようか。どういうことになつておりますか、身分関係について……。

[012]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
報告によりますと、そのうち大部分は党籍を持つておるとのことであります。

[013]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
党籍は共産党でしようか、自由党籍でしようか。

[014]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
現地からの報告によりますと、共産党員であります。

[015]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
ことしの2月5日付の朝日新聞の報道によりますと、集団暴行事件が起きました3日、日共が田口村で秘密会議を開くという情報が入つた。そこで国警の本部の警備課では、県下一斉に特別警戒パトロールをするように指令した。そうしてこの事件はこうした警戒中に起きたのであるということが、この新聞で報道されておりますが、こうした報道は国警としていかように見ておりましようか。

真実を報道したものでございましようか。新聞の推察によるものでございましようか。

[016]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
2月3日に秘密会合が行われるという情報があつて、これに対して非常警戒をしたという現地からの報告は、確認いたしておりません。

[017]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
この集団暴行を受けました2名の警察官、これは普通の巡視に当つておつたものでありましようか、何か特殊な任務を帯びた警戒にでも当つておつたものでありましようか。

[018]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
これらの警察官は、私のただいままで受けておる報告によりましては、特別の任務というふうには聞いておりません。

[019]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
これも新聞の報道でございます、また私たちも多少根拠をつかんでおる点もあるのでございますが、問題の田口村というのは、長野県下におきましても、共産党細胞の最も活発に活動をしておるところであります。しかも人数的においても党員が非常に多い、シンパの数も非常に多い。地下活動が非常に活発に行われておる。こういうようなことを同じく朝日新聞が2月の5日付で報道いたしておりますが、これらの点につきまして特審局長の御調査がありましたら、特審局長からひとつお答えを願いたいと思います。

[020]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
ただいま御質問の点につきましては、資料を持参いたしませんので、詳細はお答えできません。いずれあらためて調査の上お答えしたいと思います。届出の党員が何名あるかというような点につきましては、正規の資料に基いてお答えするつもりであります。

[021]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
それでけつこうでございます。そこでもう一つ特審局長にお尋ねをいたしますが、先ほどは国警の柏村警備部長から12月、1月に起りました警官に対する集団暴行事件の報告を聞きましたが、特審関係に関係すると思われます集団的な事件、これはずつと古いのはけつこうでございますが、最近起りました集団的のそうした事件、これはどういうふうなものがございましようか。それの詳細なる報告が得られますれば、まことにありがたいと思います。

[022]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
最近起つた集団的な暴行事件ということにつきましては、自由労組関係、あるいは鮮人関係につきまして、約1年間の概況を集計したものがございますが、ただいま持参いたしませんので、後日提出したいと思います。

実は特審関係についての集団暴行事件というお話がありました。これも狭く解釈いたしまして、特審の職員が集団暴行で負傷した事実があるかどうかというような意味に解釈いたしてお答えいたします。

実は昨年8月13日の夜、大阪市内におきまして、大阪平和友の会準備会主催の同会結成大会の流れが約300名の団体行進となつて、7時30分ごろ同市内桜橋交叉点付近を通行、そこにたまたま特審の職員の田島事務官が佇立して状況を視察しておつたのであります。ところがたちまちその中の男が出て参りまして、特審のスパイだ、吉田の犬だ、しばらくして、特審の田島だと、口々に叫んで、約2、30名の者がこれを取巻いて、同事務官の胸ぐらをつかんで、なぐる、シヤツを破るというような状況でありまして、遂には相当な重傷を負わせるような状況がありました。かような事例もございました。

[023]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
私の特審関係と申し上げましたのは、狭義の意味であります。今お答え願つた点が私の質問の趣旨でございます。これは大阪だけでございましようか、その他にございましようか、この点承つておきたいと思います。

[024]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
集団暴行事件は事案の重大なものはございませんが、軽微なものは従来しばしばありました。「アカハタ」の発刊停止、「アカハタ」の同類紙、後継紙の発刊停止処分等に際しましては、軽微な集団暴行事件はしばしば起きております。これはいずれ資料をそろえまして御報告したいと思います。

[025]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
私は本日法務府の方がおいでになつておられますから、法務府関係も同様な意味でお尋ねをいたしたい。昨年は松川事件に関連いたしまして、ああした脅迫状が盛んに出された。こういうようなものにおきまして、法務府関係で全国的にどのような事件が起つておりましようか。もつと具体的に申しますと、思想裁判から起つた判事に対する脅迫、恐喝、また検事に対する恐喝、脅迫、傷害というようなことであります。関係当局のお答えを願います。

[026]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
ただいま御質問の点でございますが、御承知の松川事件につきましては、第一審の裁判を担当いたしました長尾判事に対しまして、名古屋の自宅に相当数の脅迫状が参りました。なおこの判事に対しまして自宅の附近をいろいろな風体をした者が横行いたしまして、同判事の悪口を言うというふうな事件が頻発いたしましたけれども、この事件は幸い検察庁と警察の密接な協力によりまして、犯人の一部を逮捕しまして、目下起訴公判中でございます。詳細の資料はきよう持つて参りませんので、具体的な事実内容は申し上げかねますが、その事件が1つございます。

なお最近の事件といたしまして、大分の西村検事の自宅に1月の22日の夜10時30分ごろでございますが、鶏卵大の石とともに、次のような脅迫文を木綿の布に包みまして、窓越しに投げ込んでガラスをこわして犯人が逃走した、かような事件が起りました。内容は「西村検事よ、米侵略者と売国奴の番犬として日本共産党を弾圧するのか。今後も弾圧するなら命はないものと覚悟せよ。われわれは武装を完了しておるのだ。札幌の警備課長は民族の反逆児として殺されたのだ」。かようなことが書いてありました。この事件は目下大分の市警と検察庁と協力捜査中でございますけれども、いまだ犯人検挙に至つておりません。

次は先ほど問題になりました例の白鳥課長とも関係があるものと思われるのでございますが、ちようどその直前、この札幌地検の塩谷検事の自宅に、各種の脅迫状が参りました。ちようど新年の年賀状に事寄せまして、たとえば「松川事件の長尾みたいにお前も出世したいのか、ついでに天まで出世してしまえ、ことしは……」ちよつとこのへん文面がわかりませんが「遺言を書いてから、水さかずきをかわしておけ」というふうな年賀郵便が舞い込んだ。これが似たような文章で幾つか入つておりました。

なお松川事件の第二審の判検事に対しましても同様な投書ないし脅迫状めいたものが舞い込んだというような報告も参つております。それらの点につきまして、いずれ詳細なる資料がありましたら、何かの機会にまた御参考までに申し上げたいと存じます。きようはとりあえず手元の材料だけにとどめておきます。

[027]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
それで警察、特審関係、検察関係のある程度の事情を知ることができたのでありますが、元に返りまして警察の問題にもう一点触れさせていただきます。

警察官に対する暴行事件で新聞の報道を見ますと、この結果には必ず警察官所持の拳銃を奪いとる、要するに武器を奪いとる、こういう結果が現われ、報道されておるわけであります。これに対しまして国警としてはいかような観察を持ち、いかような処理をいたしておりましようか、これを最後に承つておきます。

[028]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
警察官に対する暴行事件に伴いまして拳銃が奪取された事例は若干あるのであります。

これがいかなる意図によつてなされておるかということは、ここで私が確言申し上げる段階ではないと思いまするが、先ほど申し上げましたように凶悪なる犯罪が頻発をいたしまするし、そうしたものに使用する意図をもつて計画的に集められることがあるとするならば、これはゆゆしき大事であろうと思うのでありまして、警察官自身の修練、また警察のこれらに対する警備態勢というようなものにつきましては、今後とも十分に研究を重ねまして、正しい位置に強力に推進をいたして参りたいと思うのであります。

なお奪取されました拳銃については、今後におきましても鋭意捜査を続けて参りたいと考えております。

[029]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
いよいよ独立の時期も近づいて参つたのでございまして、われわれ国民は、独立後の国家に対しまして、こうした事件が頻繁に起るのを非常に心配すると同時に、また国民の力をもつてこうしたものは防がなければならないと思います。もちろん国民の代表であるところのわれわれ国会といたしましては、これに対する研究調査対策を十分に練つて行くべき義務を持つのであります。

おそらく新聞で報道されておりますように、治安立法というようなものも本国会にかかるものと考えますが、この治安立法につきましては、私たちはこうした面から十分な対策を講ずると同時に、また治安立法がこうしたことを利用することによつて行き過ぎに陥つてはならないという警戒心を持つものであります。治安立法の全貌をいまだ知つていない国会議員といたしましては、この点に重大な関心を持つと同時に、一日も早くこの内容を知りたいものだと考える一人であります。きようは法務総裁の御出席を求めてあるのでございますが、いまだ法務総裁はお見えになつておりませんので、この全貌につきましては、法務総裁のお答えをいずれ機会を見ていただくことにいたします。

[030]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
田嶋委員の質問に関連して承りたいと思います。

これは警察官でなく県の公務員だつたと思いますが、自由労組の問題に関連しまして脅迫状を受けまして、そのために正月になつて発狂いたしました。そこでこの脅迫したる者に対して暴行脅迫罪の嫌疑をもつて捜査に着手いたしまして10何名か検挙したと覚えております。

その大部分は共産党員であつたと覚えておりますが、この事件について報告がありましたら、これは国警でも検察庁でも特審でもよろしゆうございますから、知られる限りの御報告を願いたいと思います。

[031]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
お尋ねのような自由労組の事件がたしか富山に発生したことは報告を受理しております。但しその詳細は、ただいま手元に持つて来ておりませんので、いずれ機会を改めまして答弁いたしたいと思います。

[032]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
現地から報告は受けておるようでありますが、現在資料を手元に持ち合せておりませんので、ちよつとお答えをいたしかねます。

[033]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
先ほど田嶋委員から質問しましたこと、それから今私の問いましたこと、これらはすべて今後の治安上において重大な関係があるものと思われます。これらのものを一つとりまとめて、どの方面からでもよろしゆうございますから、次の機会にこの委員会に明白にできるように御準備を願つて、詳細な報告を願いたいと思います。また事件が起つてまだ詳細な報告がなかつたら報告をお取寄せを願つて、ぜひ願いたいと思います。

さらにまたきよう質問しないものでもこれと同様な事件がございましたならば、まとめて御報告を願いたい。こういう希望を申し上げておきます。





昭和27年02月06日 衆議院 予算委員会
[031]
国民民主党 井出一太郎
ただいま上林山委員から長野の事件が問題に相なりました。これは私の郷里にも関係していることでございまして、1、2点法務総裁に伺つておきたいと思います。

事の起りました田口村という村は、千曲川の上流地帯にございまして、あるいは塩尻村などというのと相並んで長野県下の有数な赤い村だ、こういうことに従来相なつておつたのでございます。ことに田口村の隣りにある臼田町という町の佐久病院という病院、これにはかつて高倉輝やあるいは伊藤憲一君などが療養をしておつたことがございまして、例の有力幹部の地下にもぐつた際などは、徳田球一君はこの病院にひそんでおるであろう、こういうようなうわさも立つたほどであります。

最近私ども聞いておりましたことは、日共の活動が最近ある特定地区へ非常に重点的になつている。この郡は南佐久という郡でありますが、この郡下一帯にただいま重点がかけられているのだといううわさをかねがね聞いておつたのでございますが、これらはいわゆる電源地帯において武装蜂起をするであろうというようなうわさがとりざたされたことがございます。

たとえばかつて利根川上流であるとか、あるいは猪苗代湖一帯であるとか、こんなものが話題に上りましたが、それと同じような意味で、何か千曲川上流の電源地帯というようなものが、従来当局の方で何かの情報として、そういう地帯に重点がかけられておるんだというようなことがおありになつたかどうか、これを一点伺いたい。

さらに、今度検挙された関係者は、実は私も1、2承知しておる人物でございます。けれども今までの彼らの行動からいたしますると、静かなるレジスタンスとでも言いましようか、非常に事が慎重でございまして、おそらくああいうふうな――あるいは白鳥事件の影響があつたかどうか知りませんが、ああいう集団的な、ばかな手は用いないであろう、こう思われるような連中が検挙をせられたのでございます。しかるにその中心人物である者が即日釈放されておる。

こういうことからいたしましても、よほど当局の捜査その他は慎重であつていただかないと、あるいは泰山鳴動して何のことだ、日共とはまつたく関係がなかつたのだということに相なりますれば、これは当局の権威のためにも私は重大だと考えるのであります。そういう点は特に慎重を要求するものでありまして、捜査中のことでございますから、あえてその間の消息をお漏らしいただきたいということを切に要求するんじやありませんが、そういう点はぜひ慎重を期していただきたい、こういう御要望を特に申し上げたいと思います。ですから、今申し上げました背景をなすその地方一帯に対して、従来日共が特に重点を注いでおるというようなことに関連して、何かおわかりになつたことがあればお漏らしを願いたいと思います。

[032]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
まことに適切な御質問を受けまして、私は感謝いたします。

それで私の手元には、そういう情報が入つているということは、来ておりまするが、まだ詳細なことはわかつておりません。さつそく調べて、十分な調査をしてみたいと考えております。

今警察に対するお話を承りまして、感謝にたえないのでありまするが、その点につきましても、私は十分その背景を明らかにするように督励いたしたいと考えております。





昭和27年02月12日 衆議院 法務委員会
[014]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
私がかような質問をするのは、人心に非常な不安を与えておるということのきざしがあるがゆえに申し上げますので、これは徹底的に捜査を進められて、その根源までも明白にせられんことを、われわれ法務委員会の名において希望いたしておきます。

それからついでですが、長野県の例の田口村の警官に対する暴行事件でありますが、これも聞くところによりますと、あの近在の農村でも非常に共産党の勢力が浸透いたしておりまして、あの暴行事件が起りますときには、すでに近在の農民は皆知つておつた、それにもかかわらず警察へも案内せずにああいうことになつた、かような現地における人々からの報告でありますが、これらについてはどのように見ておりますか。またそういう事実があつたかどうか、承りたい。

[015]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
あの田口村及びあの地方は相当共産党の活動の強いところであります。従つていわゆる農村拠点といいますか、そういつた意味で相当活動の活発なところであることは、私らの方でもさように認めておるのであります。

ただあの事件につきまして、共産党が――と申しますか、あの暴行を加えた連中が事前に計画的にやつたというのではなくて、たまたま警察官の職務質問を受けたために、そこでああいう事態になつたという問題であります。

しかし警察から職務質問を受けた場合にはどういうふうにするかというようなことは、これは事前にお互いに研究していたことであろうと考えております。

[016]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
ここにも地元の代議士が見えておるのですが、これは事実においてあなた方のおつしやるのと違うようです。

われわれはあの付近に共産党が活発に動いておるということを憂えるのではありません。その動きに恐れをなして地方農民の気が萎縮し、もしくはあべこべに、共産党の言うことを聞いておらなくてはわれわれの身があぶない。かような不安を感じまして、かようなことが事前にわかつていても知らなせない。また捜査にあたつてもこれに協力しない。かようなことは根本的に治安の撹乱であると思いますから、かような事実があるかどうか。

もしあつたとすればゆゆしきことであるがゆえに、これはあなた方としてどのような手段をもつてかような不安をなからしめる方法を講じておられるか、この点を承りたいのであります。もし本日さようなことがないというなら、いま一ぺんよくお調べになつて、その具体策を考えられて御答弁になつてもよろしゆうございます。本日わかる程度でお答え願えればけつこうであります。

[017]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
ただいまお述べになりましたように、個々の町村民の人たちが、まつたく共産党に恐れをなしておる状態であるという点については、また私は承知をいたしておりません。十分取調べました上でお答えをいたしたいと思います。



[058]
日本共産党 林百郎
それから私が、実は最近調査に行つた事件ですが、たとえばあなたの方で言う38です。長野県南佐久郡田口村、これが一体組織的集団的暴力事犯だという証拠はどこにあるのです。

[059]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
この件は、新聞紙等で報ぜられましたる通り、本年2月3日の夜、長野県南佐久郡田口村の地内におきまして発生いたしました警察官に対する集団暴行事件でございます。

本件はその後現地から若干の報告が参つておりまするが、ただいままでのところ7名検挙いたしました。目下引続き捜査中でございます。事件の詳細は捜査の段階にありますので、今ただちには申し上げかねるのでありますけれども、相当多数の者が集団的に暴行したことは事実でございます。その件は目下捜査中、かようなことに御承知願いたいのであります。

[060]
日本共産党 林百郎
集団的に犯罪行為をしたというのは、検挙された者がそういうふうに言つておるのですか。自分が手をくだしたと……。

[061]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
各被疑者の自供内容その他につきましては、私から答弁いたす段階に至つておりませんけれども、その当時の被害者の言、その他を総合いたしまして、かようなことは事実であろうという報告は所信するに足るものと認定したのであります。

[062]
日本共産党 林百郎
そうすると、あなたの情報は、警察官の言つておることだけと聞いておいていいのですね。

[063]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
それぞれの証言なり、あるいは事実に対する報告の根拠その他は、ただいまの段階では申し上げかねますけれども、単なる警察官の報告だけでないということは明言いたすことができると思います。

[064]
日本共産党 林百郎
そのほかどういう資料があるか、報告願いたい。資料だけでいいのです。警察官の被害者の供述のほかに、どういう資料からそういう認定をしたかということ、資料の名目だけでもいいから、ここで発表願いたい。

[065]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
先ほど申し上げました通りで、捜査の最中でありますので、ごかんべん願いたいのであります。

[066]
日本共産党 林百郎
そうすると、当日その事件が起きる前に、120戸くらいの農村の小さい部落ですが、そこへ120、30名から200人の警察官を動員したのはどういう理由からです。

[067]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
さようなことにつきましては、私どもとしては今のところ何とも答弁の限りでございません。

[068]
日本共産党 林百郎
あなたの出した資料にも関係しますが、そういうように起きた事象だけを見て、わずか120戸くらいの農村の一部落に200人――昼食のパンを200個注文していますから、200人くらいの警察官を事件の前に動員して、夜は2時間おきくらいに警察からその村へパトロールの警察官をトラツクで運搬し、それから村には4箇所の検問所を設けて子供のランドセルから弁当箱を調査し、老婆の帯まで解かして調べるという権限が一体どこにあるのです。どういうことからそんなことをする必要があつたのです。たとえばもう少し例を申しますと、あなた方は警察がやられたことばかり言いますが、村民や一般の労働者や農民がどんなに警察に苦められているかということを言はなくて、そのために起きた結果ばかり報告しておるじやないですか。

私が事実調査をして来た結果を申します。小さい一部落に4箇所の検問所を設け、100人以上の警察官を動員して、そこを通る小学生を、学校の往復にカバンと弁当箱の中を全部調べている。清川という部落のある老婆は下着1枚にまで脱がされて調べられている。3日の夜南佐久の臼田警察の署長宅を暴徒が襲つたといつて、何らの根拠もないのに半鐘を鳴らして消防を集め、署長の宅を護衛させている。ところが次の晩実際に火事があつたので、このとき半鐘をたたいてもまた署長の家を守るのかといつて消防の人はだれも出て来ない。検挙されている大塚辰紀という村会議員で区長さんでありますが、この人の長女と長男は田口の小学校の中で2名の刑事から調べられて正直に言わなければお父さんはいつまでたつても帰られませんよと、学校へまで行つて子供の取調べをしている。それからこの被疑者の夫人は、刑事から、あなたは毒薬を飲めといつてここへ毒薬を持つて来てもしやべりませんかといつて取調べを受けている。こういうように子供を小学校へ行つて調べたり、検問所を設けて学生のカバンの中や弁当箱の中を調べたり、通つている老婆を裸にしてジユバン1枚で調べるという法的根拠はどこにあるのです。

[069]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
私の方を向いて御質問になるので私に対する御質問かと存じますけれども、さようなことは少くとも法務府に関する限りは直接の所管ではございませんので、しかるべきところからお答えをお聞きとり願いたいと存じます。

[070]
日本共産党 林百郎
あなたがこういう資料を出すから私はそういうことを言いたくなるのですよ。何も事がないのにただ警察官をなぐつたりいろいろすることはないのです。

やはり労働者が生きなければならぬために越年闘争をするとか、たとえば田口村のもそうです。部落有の村林を解放して、この村の木を売つて1戸当り平均1万円ずつの金をほしいという村民の要求を押えて、部落の林を一部のボスが支配して製糸会社と取引をしようというような対立があつて農民の運動が起きているとか、あるいは繭の代金の未払金があつて製糸家に要求して、製糸家から繭の未払金の精算を受けておる。こういう農民運動のはげしいところへ、また農民が当然自分の要求すべきものをもつて立ち上つておるところへ、警察官が100人も200人も行くから、農民としては自分の要求を弾圧されたということで、こういう事態が起きるわけです。

そういうことの半面も考えないで、ただ警察官がやられたやられた、こういうことだけ言うから、あなたの出しておる資料に関連して質問しておるわけです。あなたも大分恐縮しておるようですから、これ以上あなたを責めません。

そこで私は国警長官にお聞きしたいのですが、一体小学校の子供まで検問所を設けて、そこでとめてカバンや弁当箱の中まで調べる権限が警察官にあるのですか。

[071]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
私はそういう点は全然まだ報告を受けておりませんので、詳細取調べました上でお答えをいたしたいと思います。

[072]
日本共産党 林百郎
これは私が調査して、みんな村の人たちから聞いて来たのでありますから、これは間違いないのです。どうかひとつ田口村の現場へ照会を出して、事実の有無を確かめて、そういうことは絶対させないようにあなたから注意してもらいたいと思う。

それから2時間おきくらいにこの小さい部落の中へ夜中に大きな音を立ててオートバイやトラツクが来て村の人が眠れないという。そこへ警察官を置けばまたどうなるかわからないという不安を理由にしておるらしいが、こういうのも適当なところに待機させて、万一のときには連絡をとるということにして、せめて夜は村民が眠れるような方法を、捜査の途中にあつても私は講じてもらいたいと思うわけです。

それからもう一つ先ほどの法務府の方にお聞きしますが、これは目下調査中であつて、これが共産党の計画的な行動であるのか、偶発的な事件であるのか、そういうことは目下まだ結論が出ていないというように聞いていいのですか。

[073]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
大体その通りでいいと思います。





昭和27年02月14日 衆議院 地方行政委員会
[064]
日本共産党 立花敏男
それでは具体的問題でお聞きしたいのですが、最近非常に弾圧の形が鋭く出て来ておるのです。

――これは地方行政委員会でありますから、自治体の問題で申しますと、長野県田口村の事件、これなどは非常に小さい部落である。そこをその部落の人口に数倍するような警官で包囲いたしまして、村の出口4箇所に査問所を設け、出入りを一々調べる。小学校の中で子供まで捜査尋問する。子供の弁当箱の中までひつくり返す。女の人は下着1枚にまでするということで、そのために全村の機能が麻痺するようなことをやつておる。

これは私どもの兵庫県でもこの間ありまして、兵庫県の高砂の木曽町、これは戸数が80戸くらいのところですが、ここで朝鮮人の間に正月の祝酒を飲んでけんかが起きた。これをきつかけにいたしまして戸数80戸ばかりのところへ600人ばかりの警官が動員いたして参りまして、全戸至るところへ土足で上つて、令状も何もなしに捜査逮捕をやつているということで、ささいなる事件をとらえまして、全自治体機構を包囲いたしまして、自治体機構の機能を麻痺させるような形で警察権を行使しておる。しかも何ら正当な理由もなしにやつているのです。

こういうことが最近至るところに起つておるのですが、具体的に例をとりまして、田口村のような場合に、国警の方ではどういう報告をおとりになつて、どういう見込みをお立てになつておるのか。あるいはさいぜん申し上げました兵庫県の木曽町の場合はどういう問題だつたのか、これをひとつ聞きたいと思います。

[065]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
兵庫県の場合は私まだ報告をよく受けておりませんので、必要がありましたら調査の上お答えをいたしたいと思います。

田口村の事件はただいまおつしやるような、全住民に御迷惑をかけるようなやり方はいたしておりません。また事件が起りまして後に、警察官が翌早朝検問所4箇所を設けまして、警備及び被疑者あるいは被疑者の発見のために活動をいたしましたことは、なるほど事実でありますが、しかし人数もただいまおつしやるような多いものではありません。この村及び周辺の村と合せまして、127名が従事をいたしたのにすぎないのであります。人権の尊重につきましては、十分配慮をいたして捜査を続けておるわけであります。

軽微な事件とおつしやいましたが、私の方といたしましては決して軽微な事件とは考えておりません。

[066]
日本共産党 立花敏男
どういう意味で軽微な事件でないと御判断なさるのですか。

[067]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
本村における従来のいろいろな関係及び当日警察官が暴行を受けました状況から考えまして、これは単なる偶発的な、そしてとるに足らない暴行事件、かように考えるわけには参らないものであります。

[068]
日本共産党 立花敏男
どういう報告で、どういう事実で、単なる偶発的なものでないと御判断になつたのか、私は不可解なのですが、地元の警察では、これは決して計画的な暴動でも組織的なものでもないということを言つておりまして、自然発生的なものだと言つているわけなんで、長野県からはるか離れておられる国警長官が、これは偶発的なものじやないという御判定をなぜなさつたのか、それをひとつ聞かしてもらいたいと思います。

[069]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
この日に警察官を組織的に襲撃しようとしてやつたという、そういう組織的な事件とは考えません。

事件はそのときに偶発的に起つたのでありましようが、偶発的にああいう事件が起り得るということにつきましては、われわれといたしましてはいろいろ重大に考えなければならない点が多々あると考えます。

[070]
日本共産党 立花敏男
ちよつとこれは重大な問題ですが、事件は偶発的に起つた。しかし起つた背後には何かあるのじやないか、そういうふうに齋藤長官の言葉は解されるのですが、あなたの言葉の通り地元の警察では偶発的だと言つているわけなのです。しかもそれを齋藤さんは背後関係があるとおつしやつているのですが、何に基いて偶発的な事件を背後関係と結びつけておるのか、それをお聞かせ願わぬと私どもは納得できない。

実はきのうも衆議院の法務委員会で松阪事件をお取上げになつて、警察から市役所から、消防団から新聞社まで、全部呼びましてやつたのですが、何でもないという結論が出ておるのです。あの事件なんか、犯人が逮捕されまして、まつたく何でもないということが明白になつております。ところが当時は検事あたりまでが、共産党の背後関係で、第2の三鷹、松川事件だと言つたということが新聞に載つておりました。これは東京の新聞でもでかでかと載つております。しかも法務委員会がきのうまで取上げているわけなのです。単に退校されました学生の恨みのための放火事件であれば、法務委員会で取上げる必要は何もないと思うのですが、やはり背後関係が何かあるというふうな誤つた方針で、きのうまで衆議院を騒がしておるわけなのです。

こういう問題と関連いたしまして、長野県の偶発的な事件が、何か背後関係があるというふうにお考えの上で、いわゆる見込み捜査と申しますか、まつたく政治的な偏見から出ますところの捜査で騒がしておるということは、あなたの言葉からどういたしましても明白だと思うのです。現地に行つて調査して参りますると、やはり事件の発端はそういう国警の誤つた見込み捜査、これが偶発事件の発端をなしておるようです。たとえば国警の方で、信州のこの方面に、追放幹部の某が潜入したから警備を固めよというようなことを発表されておりますし、事件が突発いたしました3、4日あとでは、その某共産党幹部は東京方面に逃走したというような新聞記事まで出しまして、まつたくでたらめな情報で人騒がせをやりまして、事件をでつち上げておる。むしろ警察の方が事件をでつち上げておる。ここに私新聞を持つておりますが、地元の新聞でもこういうことを報道いたしまして、そういう空気の中で、ああいう突発事件を起しておいて、しかも突発事件がこじれて参りますと、その手配した男は東京方面に逃走したというようなことまで新聞に出しておる。そうなつて参りますと、事件の背後に何か組織的なものがあるということよりも、むしろ事件の背後には、国警の政治的な偏見に基く意図を含んでおるということの方が明白なんですが、たまたまそういうことが今の齋藤さんの言葉で暴露されたと思う。

事件は偶発的である、しかしその背後には大きなものがあると考えるということを発表なさつたのですが、ではどういう具体的な事実で、偶発的なものが背後のものと結びついておるとお考えになつておるのか。これを明確にしていただかないと、私どもは納得できないし、またそういうことを明白にしないで、ありもしない背後関係を振りまわして、警察の行政をやられるとすると、これはたいへんなことになる。この点をひとつ明らかにしていただきたい。

[071]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
私は背後関係という言葉は使つておりません。また、ただいまは捜査の途中でありまするから、ここでお答えのできない点がありまするので、御了承願いたいと思います。

ただ警察官が職務質問をしたということから端を発しまして、数名の警察官がああいう暴行を受けるということは、相当重大な事件と私は考えております。





昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会
[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
それから長野県下の田口村事件につきましては、これは2月3日の夜午後11時頃に南佐久地区署員4名が無灯火の自転車で通行中の1名を職務質問いたしましたところ、警察官に抵抗をいたしましたのでこれを逮捕したのでありまするが、その際に他の参集者等が警察官に対しまして集団暴行傷害を加えた事件であります。

本事件につきましては爾後捜査の結果、2月4日正午までに前述の1名の被疑者のほかに被疑者7名、うち4名は団体等規正令による届出のある日本共産党員でありまするが、これを逮捕いたしました。

7名のうち2名は釈放をいたしておるのであります。この事件も捜査中でございまするが、当日これらの暴行を加えました被疑者等は、或る種の会合を開催をいたし、その帰り途に職務質問を受けて、かような暴行を働いたものと考えておるのであります。





昭和27年04月25日 衆議院 行政監察特別委員会
[136]
委員長 内藤隆
それらの事犯のうち、警備上特に注目されねばならないと思われるものを、ここで2、3実例として御説明を願いたいと思うのですが、まず長野県下の南佐久郡田口村に起りました警官に対する集団暴行事件のその後の取調べ状況はどうなつておりますか。またその事件の内容等を簡単に御説明願いたいと思います。

[137]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
長野県田口村の事件と称せられておりますのは、本年2月3日の事件でありますが、当日警戒中の警察官が、1名の挙動不審の者を職務質問いたしましたところ、2、30名の者にとりかこまれまして、袋だたきにされ、2名は重傷を受け、2名は軽傷でありましたが、その際警察官の拳銃と手帳を強奪された事件であります。

当日は事前の情報によりまして、田口村の党員の宅あるいは山林内で、朝鮮人を含めた日本共産党の、武器を所持しての軍事訓練が行われるという情報がありましたので、警戒中であつたわけであります。

ただいま申し述べましたこの警察官に対する暴行事件は、きわめて巧妙であつたのであります。相当訓練をされなければ行われないようなやり口であつたと私は記憶いたしております。

その後捜査の結果、被疑者22名を検挙いたしまして、現在そのうちで7名が起訴せられておる状況であります。これは今裁判所において裁判中でございます。

[138]
委員長 内藤隆
長野県は全国でも特に思想的に非常に進歩したというか、社会主義的な思想が昔から強かつたようでありますが、この田口村というのは、特にそういう共産党系もしくは共産思想を持つた者がたくさんおるような村じやなかつたのですか。

[139]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
田口村は、長野県の南佐久郡のうちでは最も戦闘的な分子が多いといわれておるところでございます。

届出党員が22名ということになつておると思いますが、ここの世帯数が1153戸でございます。そのうち同調者等を入れて約200名くらいおると思います。

[140]
委員長 内藤隆
さいぜんの証言のうちにあつたが、ともかくその襲撃の状況等を見ると、相当に軍事訓練のようなものを受けなければできないほどの巧妙なものであつたということである。

それは、そういう共産党員がたくさんいる村だから、軍事訓練等に類似した訓練をやつておつたということが、何か事前にわかつておいでになりましたか。

[141]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
この村で訓練をやつておつたということは、事前に知つておりませんし、またこれはわかりません。

だが当日は他からも朝鮮人等も相当入つておりました。某住宅においてひそかに会合を続けておりました中に、相当訓練を受けた朝鮮人等もまざつておるようであります。

[142]
委員長 内藤隆
村民のみではなく、朝鮮人等も加わつておつたわけなんですね。

[143]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
さようであります。



[188]
日本共産党 山口武秀
先ほどの証言によりますと、長野県の南佐久郡田口村事件につきまして国警側で警戒をした。その警戒の原因になりましたものは、田口村で朝鮮人を交えた共産党の人たちが軍事訓練をやるということがうわさとして入つたので、こういう警戒をしたというようなことでありまして、これはその後22名の被検挙者を出したという話でありまするが、そこにおける取調べの際に、そういうような事実があつたことが判明したでしようか。

[189]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
何らかの集会をしたということが明らかになつております。

[190]
日本共産党 山口武秀
何らかの集会をしたということと、軍事訓練を実行したということとは根本から違う。軍事訓練をしたという事実はなかつたのです……。

[191]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
そういう情報を得まして、どういう会合か集まりがあるということで、警察官がたまたま不審な人に出会いましたので職務質問したのであります。この事件は警察官に対する集団暴行の事件となつておりますので、事件といたしましては、その集団暴行の事実をいろいろ取調べておるわけであります。

どういう関係で集まつたかということは、刑事事件といたしましては、今日の法律上では大した問題ではないのであります。

[192]
日本共産党 山口武秀
これはおかしな証言です。先ほどのお話によれば、軍事訓練をやつているというので警備を行つた。このことが目的で警備をやつていながら、そこで検挙された問題があつたときに、この点についての取調べというものはなかつたのですか。

[193]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
今日の法律では、軍事的な集まりをする、そこで軍事方針を協議するということだけでは、刑罰の対象にはならぬのであります。

[194]
日本共産党 山口武秀
それではなぜそのために警備の必要があつたのですか。

[195]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
どういう人たちがそういうことをやるかということをわれわれは知つておりますことは、今後それが現実にどういう不法行為として現われて来るかということを見なければなりませんから、ふだんからそういうものはよく知つておかなければならぬのであります。

[196]
日本共産党 山口武秀
それだからその事実の有無を知つのたかと聞いた。

[197]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
黙秘権その他によりまして、はたしてどの程度の打合せをしたかはわかつておりません。



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