白骨団暗殺計画 ~ 在日紛争

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岡田春夫プロフィール
1914年6月14日 - 1991年11月6日
日本社会党→労働者農民党→日本社会党
第53・54代 衆議院副議長





昭和28年07月24日 衆議院 法務委員会
[056]
岡田春夫
なおもう一つ、これは大臣にぜひお聞きを願いたいと思うのですが、御調査願いたいもう一つの案件があるのであります。これはまたきわめて重大な問題でありまして、この日本の国内において暗殺の計画があつて、200万円の金を渡すという約束で13名の者を暗殺するという計画が進んでおるという話を私は聞いたのであります。これまたきわめて重大であります。

事件の概要を申し上げますと、東京都内の足立区の本木町というところにゴムの工場があります。このゴムの工場で労働者の諸君がお盆の手当を3000円もらいたいというので、経営者側に交渉した。ところが経営者側の人がたまたま韓国の居留民団の人であつたために、居留民団の本部の人に連絡をつけて、居留民団の本部の人が中心になつて、足立区に根拠を置いて、しかもこの居留民団の団長の崔という人が直接に暴力ざたの指揮をとつておるという話を聞いております。しかもこの崔という者が、われわれの聞いおる限りでは白骨団なるテロ団に話をつけてこの白骨団の首謀者は通称松岡という男だそうであります。こういう居留民団の韓国人を中心とするこの白骨団が、朝鮮民戦のいわゆる賃金値上げを要求したところの――これはやはり朝鮮人の諸君でありますが、民戦の諸君の幹部13名を暗殺する計画を立てて、区役所からは外国人登録法に基く登録の写真を写しとつて、この写真を持たして、13名を殺したならば200万円の金を渡すということまでも謀議をして約束をしておるという話でございます。

しかもそれだけならばまだ何ですが、すでにこの一端として考えられるべきものとして、7月13日午後7時ごろに韓国居留民団、足立支部のこういう暴力団の人40名が朝鮮の統一民主戦線足立委員会の事務所に来襲をして、居合せた金鉉五以下4名に対して暴行傷害を加えておる。

この事件は、事前に実はこの労働者の側でわかつておつたので、防衛をしておつたのであります。ところが防衛をしておつたが、西新井の警察の方でやはりこの事件を聞きつけて――聞きつけてというよりも、労働者の側から西新井署の方に通知をしたわけであります。聞きつけて参りました山田という公安主任から、この事件についてはこういう暴行を振おうとした者に話をして解散をしろということを命令したので安心してくれ、君たちの方もひとつ解散して安心して帰つてくれという通告があつたので安心をして労働者の側は解散をしたのだそうであります。

ところが解散をしてから5分もたたないうちに、突如民団の暴力団が押し寄せて参りまして、ただいま申し上げたような暴行事件が行われており、しかも、ただこれ1回だけならまだ問題ないのでありますが、その次にもそのような危険な状態があつたので、再度労働者の側から警察の方に訴えましたところが、これに対しては、いやもうあの民団の方は解散さしたから絶対に安心してくれ、君たちの方も心配がないから、こういうことの回答があつたそうであります。

ところがそういう回答があつたので、安心してまた解散をしたところが、その夜中に――16日の午前3時です。今度は民団の暴力団8人が労働者の側の者である鄭石根という人の家を襲つて、これに対して全治1箇月の傷害を起しておる。それからまたそれと同じ日の午前1時ごろには具永基というやはり労働者に対して、家を襲つて殺すぞというわけで、これをリンチしております。

このようにきわめて重大な事態になつておりますし、その後においても、この暴力団は先ほど申し上げた13名の幹部といわれる者の自宅をひんぴんとして襲つていろいろな暴行を加えておるというような事実がある。現在までにすでに判明いたしましただけでも、7人の自宅を襲撃をいたしましてそうしていろいろなことをやつておるというような状態でありまして、その付近の住民としてもこれはきわめて重大な問題であるというので――そういう状態になつておるわけであります。

ところがふしぎにも今までのところ西新井署がこのような事件が起つておるにもかかわらず、あまり積極的でない。たとえば23日の事件のときに使われたと見られる硫酸びんが3個押収になつておりますが、この硫酸びんなども押収したまま置いてあるというような状態、しかも先ほど申し上げたように、この暴行事件で5人の者がけがをしたのでありますが、けがを加えました加害者に対しまして、その事件の最中に現行犯として捕え得る状態であつたにかかわらず、なぜかそれを捕えないで、被疑者からの申出によつて5人の者を逮捕して、しかも逮捕してもろくろく調べもしないで、そのうちに釈放して、在宅捜査という名目でそのままほうつてあるという事情になつておりまして、きわめてこれは重大であると思ひます。

法務省としてもひとつこの点について緊急の調べを願いたいと思うのであります。いずれ参考資料はお手元に届けたいと思いますから、ぜひともこの点もお願いをいたしておきます。

[057]
法務大臣 犬養健
承りますと大分物騒な事件でありまして、もしほんとうなら相当重大なことだと思います。実は、午前中非公式にその関係書類を一部入手させていただきましたので、さつそく検察庁にまわしてございます。ちようど田中警視総監もなかなかおられることだから、警視総監とも連絡しまして真相を明らかにいたしたいと思つております。





昭和28年07月29日 衆議院 法務委員会
[032]
岡田春夫
数日前の委員会において、東京都下の足立区に起りました事件に関連して白骨団なるものの暗殺団の13名の暗殺陰謀が企てられているという話をわれわれは耳にいたしておりまして、この問題について事が事であるだけに厳重に調査を願いたいという要求をいたしたのでございます。

これについて犬養法務大臣は、事件がお話の通りであるならばきわめて重大であるから、法務省としてもしかるべき担当において即刻調査をいたしたい、こういうような答弁がありまして、ちようどときたまたま田中警視総監が法務委員会の傍聴として参加しておられましたので、それに関連してぜひ警視総監の管轄の西新井署の事件であるだけに即刻御調査を願いたいということを要求をいたしました。その後委員会が終りましてから口頭ではありましたが、書面等につきましても警視総監にこれを手渡しまして、その内容を警視総監にもお伝えをいたしたわけなのでございますが、その調査の結果をまず警視総監から伺いたいと思います。

それからまた法務大臣から、即刻しかるべき担当において調査をいたして報告をいたしたい、かように回答がございまして、口頭で検察庁と人権擁護局と両方において調査をしたいという意味の答弁もありましたので、これについても法務省当局からその調査の結果を伺いたい、かように考えております。まず第一に警視総監から細詳なる経過を承りたいと思います。

[033]
参考人(警視総監) 田中榮一
過日ちようど私法務委員会を傍聴しておりましたときに、岡田委員の御発言の途中から承つたのでありますが、前段の13名の白骨団、これにつきましては私聞き漏らしておりましたので、実は後段の西新井警察署管内の民団並びに民愛青のいろいろないきさつにつきましてさつそく調査いたしました。この点だけを私から一応御回答申し上げたいと思います。なおその白骨団云々の問題につきましては私自身もひとつよく調査してみたいと考えておりますが、その際に岡田議員からいただきました資料をもとにいたしましていろいろ調査をしてみたいのであります。私がこれから申し上げますことは警察として調べた調査でありますので、あるいは多少事実に相違しておる点あるいは事が前後しておる点があるかもしれませんが、一応申し上げてみたいと思います。

今回の西新井署管内におきまする民団並びに民愛青の争議は、その紛糾の原因といたしましては足立区本木町1丁目935番地に植村ゴム会社というこれはゴム製の運動靴を製造している会社でございますが、そこに従業員が約30名ほどいますうち、北鮮系と認められる従業員が2、3名あるということであります。

社長は韓国居留民団員の植村、これは日本名であります。植村は43才でありまして、この従業員は夏季手当要求中であつたのでありますが、7月10日付近在日朝鮮民主愛国青年同盟員、民愛青員と申しますが、夏季手当を支払わぬ植村ゴムの横暴云々のビラを前記植村工場の前の電柱に張つたので、植村が「関係者以外の者が干渉するのはけしからぬ」といつてこれをとりはがしたところ、民愛青員4名に取囲まれ、うち1名にその場で殴打されたため植村は、足立区本木町1丁目810番地、在日朝鮮統一民主戦線足立委員事務所に抗議したところ、そのとき同所にて民愛青執行委員鄭忠權はその非をさとり民愛青名義をもつて植村に対しわび状を入れたのでその場は一応治つたのでありますが、本月12日午後5時ごろ民愛青幹部朴明漢、康賞基等が植村方に押しかけ「個人名義のわび状ならさしつかえないが民愛青名義では困るから返せ」と談じ込んだが植村はとうとうそれを返さなかつた。

同日午後10時ごろ民愛青4、5名が足立区本木町1丁目936番地民団事務所前で民団員と口論し殴打した上、さらに民団事務所の看板を持ち去つたと民団側が称していることが民団足立支部と民戦・民愛青足立支部との紛争の原因となつたのであります。

そこで7月13日の状況を申し上げますと、民団側は午前中より約50名くらいが民団事務所に集合しており、民愛青側は民団側集合の状況を察知して北鮮系朝鮮人に呼びかける一方王子高校生約100名位を動員、足立区本木町1丁目都立第四朝鮮人小学校に待機させたのであります。

そこで午後4時30分、民愛青幹部文景南外2名が西新井警察署警備主任に面会を求め、民団側が動員しているから警戒してもらいたいと申入れ、また民団側幹部も民愛青が動員しているからと同様の申入れを双方から受けたのであります。そこでただちにその旨署長に報告し、署長は、私服員3名、制服員5名を1組として双方に派遣して、事端を起さざるよう説得に努めましたが、民団側においては全員飲酒しており、代表をやつて交渉すると称しているために、事態の発生を予想し、その旨西新井橋派出所に待機中の警戒員に連絡したのであります。一方民愛青側は説得を受け、一応退散いたしました。なお警察署には事態警戒のため署員を待機せしめたのであります。

同日午後6時50分ごろ民団側は警察署員の説得を聞かず、民愛青と交渉すると称し代表らしいものを先に立て、約40名くらいが、約2、300メートル離れた近距離にある民愛青事務所に向つたので、私服員より制服警戒員に連絡したが、その間民戦事務所にいたり、留守居と残務処理のため残つていた4名に対し、「看板を返せ」と押問答のあげく附近の民愛青が出て来たため、署員の制止も及ばず、遂に民愛青員との乱闘となり、民愛青員4名の負傷者を出し、またこれを制止した私服警察官3名もまた殴打されるに至つたのであります。

民団側の暴行の報により、ただちに警察署より警戒部隊を出動させるとともに、警視庁予備隊の応援を得て事態の鎮圧に努めたのであります。事態鎮圧後暴行容疑者として民団側6名を検挙したのであります。しかして午後10時30分ごろ民戦男女30名ぐらいが西新井署に来署し、代表3名が署長に面会し、また同時刻ごろ民団代表5名も来署、署長に面会を求め、双方とも公平に措置するよう要望し引揚げたが、それぞれ各事務所に約20名ぐらいが残留し、対峙していたので、これが警戒を行つたのであります。

その後の状況といたしましては、7月14日民団系は50名くらい集合し、民戦系は80名くらい集合し、おのおのピケを張つて互に警戒していたので、署長は双方に対し平穏裡に解散するよう説得する一方、事態発生に備え、視察、警邏を強化するとともに、警戒態勢を整えていたのであります。

7月15日民団系は一応事務所は解散したるようにして各所にピケを張り、民戦側は事務所に約50名くらい集合し、夕刻より朝鮮人小学校に移動、各所にピケを張つて警戒していたので、署長は前日同様再び代表者を招致説得に努めつつ、警備は前日同様継続して行つたのであります。

7月16日民団側は民戦がこん棒、ラムネびん、硫酸等を用意し、大挙動員して民団襲撃という情報が入つている以上、あくまで防衛態勢は解除できなかつたわけであります。

民戦側は彼等の暴力行為はわれわれは黙視できない、さもなくば自衛上動員待機もやむを得ないと双方とも譲らず、事務所周辺にピケを張り相対峙していたため、3度説得に努めたるも両者の空気は険悪化していることが察せられたので、双方の事務所周辺の警戒を厳重にしていたところ、17日午前1時40分ごろ民戦側は30名あて3隊にわかれビラ張りと称しこん棒を所持して行動に出たので、警戒中の次席の指揮する部隊はこれが民団との接触を防止し、これを解散せしめるよう阻止していたところ、民団事務所付近のピケがこれを認め、民団事務所より約20名くらいが同様こん棒をもつて出て来て、双方とも投石し始めたが、次席が部隊を率い、中間に位置し、双方を鎮圧阻止解散せしめたのであります。

7月18日以降につきましては、7月18日は民団・民戦共警戒のため人員が集合していたが、19日以降民団は昼間1、2名を事務所に残していたが深夜50名くらい集合して、夜明け前に全員帰宅して民戦は昼間4、5名ないし14、5名午後11時ごろより60名乃至30名くらい集合し、民団事務所周辺へのビラ張り等を行い、その都度阻止されているのであります。

警戒態勢は7月17日以降、夜間予備隊1箇小隊を配置警戒に当らせたのであります。

以上今までの大体の情勢でございまするが、その後の情勢はどういうことになつておるかと申しますると、警察といたしましては13日の午後14時30分から署長室において双方に対して、外部の応援勢力を解散することを理由に紳士協定、和解策を講じましたところ、一応双方が納得して引揚げてもらつたのであります。そこで一応口頭和解策を講じましたが、16日早朝民戦側の2、3の者が民団の事務所に侵略をした事件が発生いたしましたので、16日午後5時から夜の12時にわたり、双方に対し文書、交換和解策を講じましたが、遂に回答を得ることができず、明日に持ち越したのであります。

さらに民戦側の民団側に対する挑発事件が惹起したので、この交渉を中止せざるを得なくなつたのであります。

その後最近におきまして、7月28日午後3時30分から午後6時30分まで、人権擁護委員の方と法務事務官、それから署長、民戦側の代表2名、民団側の代表2名、これらの人々が集まりまして和解工作をいろいろ協議をいたしております。

28日には両者間に意見の相違がございまして、遂に解決には至らなかつたのでありまするが、さらに30日午後1時からこれらの人々が再び集まりまして、今後の和解工作について協議をする予定でございます。

現在までに検挙しておる者は何名あるかと申しますと、7月13日の事件におきまして5名、7月16日の事件におきまして2名、なお7月16日の事件につきましては、今後もさらに容疑者を逮捕すべく捜査を継続いたしております。なおその節5名の検挙者を出して、すぐに釈放したのは不当ではないかというお話でございましたが、これは事態がはつきりいたしましたし、本人らが逃亡するおそれもございませんし、一応在宅調べとしてなお捜査を継続いたしたのでありますが、大体事件は調書もできまして、これはすでに検察庁に身柄をつけずに、事件としてこれをすでに送つております。今後検察庁におきまして、さらにこれに関する捜査が続行されるものと考えておる次第であります。

それからなお本件に関しまして、警察署の態度でありますが、お話によりますと、警察署のやり方が民団側に有利に警備をして、民戦側に不利であつたというような意味に私は聞いたのでありますが、警察はこうした紛争の中に介入することは当然できないのであり、警察といたしましてはこうした紛争はあくまで厳正公平の立場においてこれを解決せねばならないと考えております。また現在署長以下もさような心構えで極力誠意を持つて両者の代表者を集めて和平工作といいますか、平和のうちに調停をして本事件を円満に解決するように、最善の努力をいたしております。ただこの問題につきまして、率直に申し上げますが、西新井警察署の本事件に対する情勢判断というものが、少し甘過ぎた。これは私どもは率直に認めざるを得ないのであります。こうした民戦、民国の争議というものは、これは管内各所に今までも起つております。ややともいたしますると、双方において、あるいはその問題の経過いかんによりましては、集団的に双方がなぐり込みをかけたり、あるいはなぐり込みをかけられたり、あるいは個人の住宅を襲撃したり、あるいは路上において突如襲撃をしたり、そうした事件が再三起つておるのであります。かような点から、われわれといたしましてはこうした紛争につきましては、最悪の事態を常に予想して警戒態勢を整えておつたのでありますが、今次の事件につきましては、若干情勢判断が甘過ぎたのではないか。従つてその警戒の点において、少し遺憾の点があつたのではないかということもわれわれは率直にこれを認めるのであります。従つて西新井警察署におきましても、17日以後完全に警戒態勢をしきまして、われわれは必要があるならば、幾らでも予備隊を出すからということで今相当厳重に警戒をいたしまして、再びこうした不詳事件が発生しないように、十分に注意を重ねておる次第であります。

そこでわれわれといたしましては、警察はあくまで厳正公平な態度で事件の解決をできればあつせんもして調停いたしたい、かように考えておりますので、いろいろ今も申し上げましたごとくに、人権擁護委員の方にもお出ましを願い、法務事務官の方にもお出ましを願つて、署長だけでありますと、あるいはまたどつちかにひいきしておるのではないかという誤解もあるようでありますから、人権擁護委員の方にも御立会願つて、ただいま何とか一日も早くこの事件の円満に解決するように努力をいたしておりますので、また民団、北鮮両方におきましても、感情にかられずに、冷静にこの問題を解決して、一日も早く何とか円満解決するようにわれわれは念願をいたしておる次第でおります。

[034]
政府委員(法務政務次官) 三浦寅之助
ただいま警察側から詳細な報告があつたのでありますが、法務省側といたしましても、検察庁側といたしましても、ただいまの報告の通りでありまして、その程度より以上は今のところわかつておらないのであります。御了承願いたいのであります。

[035]
岡田春夫
三浦さんにお伺いするのもあれですが、検察庁はその程度よりわかつておりませんというのは、警視庁の報告に基いて、検察庁がその報告を聞いた程度であつて、それ以上はわからない、そういう意味なんですか、どうなんです。

[036]
政府委員(法務政務次官) 三浦寅之助
現在の調査の段階においては、今警察側から報告を受けた程度であります。まだ調査はしておるけれども、それ以上のことはまだわかつておらないわけであります。

[037]
岡田春夫
この間犬養法務大臣がはつきり答弁をされているのは、検察庁自体としても独自の活動として調査をいたします、こういう意味だつた。今のお話を聞いていると、何だか警視庁の報告を聞いて、検察庁が大体その程度であろう、その程度しかわかりませんと三浦さんが言つているような感じがしてしようがない。そこで実際に調査をされているのであるならば、具体的にどういう資料があつて、こういうようにという、委員会のわれわれの常識として、おそらく御報告があるはずだと考えるのでありますが、これは前に、三浦君がそのときおられなかつたので、あまり責めるのもどうかと思いますけれども、その点は非常に重要な点ですが、検察庁としても独自活動として積極的に調べていただきたいと思うのです。この点を要望いたしておきます。

それから昨日この問題について、弁護士側から告訴しておりますが、これについてはなぜか検察庁側ではこれを取合わないかのごとき態度をとつております。というところから判断いたしましても、何か検察庁としては独自な活動をすることによつて調査をしているというのではなくて、警視庁の報告を待つて、あるいは現在のところまだ検察庁としては調査をしておらないために、わからないために、そういう告訴に対してきわめて冷淡な態度をとつているのではないかと思うのであります。

しかしこの事件はあとでもつと具体的に思し上げますけれども、事人間の生命に関する問題で、13人の人が暗殺の計画を立てられてその対象になつて、13人を殺したならば200万円の金を出そう、こういう話までできていると伝えられておるのであります。それだけに検察庁としては、やはりこの際厳重に、しかも早急に調べていただくことが、ぜひとも必要であると思います。従つてこの点について強く私としては要望をいたしておきます。

[038]
政府委員(法務政務次官) 三浦寅之助
ただいまの御趣旨に沿うように、十分に、至急調査することにいたします。



[045]
岡田春夫
警視総監のお見えになるのを実はお待ちしておつたのですが、先ほどの報告によると、13日に民戦の事務所で暴力事件が起つたために5名の者を逮捕した、しかしそのあとにおいて一応一切の調べが済んだので釈放して、在宅捜査の形でそのままに置いてあるというお話でございます。

ところがこの事件については、私たちの調べておる限りにおいては、被害者が5名出ておるが、被害者について何ら被害の事情の調査をやつておりません。被害事情の調査をやらないで、しかもどういう観点から逮捕したのか知りませんが、5名の者を逮捕して、さらにその場合において、西新井の警察においては硫酸びんが3個押収になつておるはずである。民団側の投げた硫酸びんが3個ある。このように硫酸びんまで使つた危険な事件に対して、逃亡のおそれがないというような簡単な考えで、在宅捜査というような形で釈放するということ自体が、先ほど警視総監の言われたように、西新井の署の考え方が非常に甘いということを明らかにしておると思います。

しかもその13日の事件が起る直前において、民団、民戦の両方に対してそれぞれ警官を派遣して、そうして両団体に対しての解散を要求したと言つておるのですが、この場合において、民団に対しては山田という公安主任外7名の者が行つております。しかもこれが、先ほどの警視総監の報告にもあつた通り、話がつかなかつたと言つておるが、山田公安主任外7名、合計8名の諸君がそこで一緒に酒盛りをやつておつたということになつておるのです。

だからこれを手ぬるかつたという一般的な表現で言えばそれきりかもしれませんが、こんなことでは事件の解決ができるはずはないのであります。こういう点についても、警視総監としてもつと内部にまで入つた具体的な調査をしていただかなければ、私はこの問題の解決はつかないと思います。この点について今までの御報告を聞いておると、具体的な報告がないようでありますが、被害者に対する被害の事情調査、あるいは硫酸びんの3個があるはずであるが、こういう点についてももしおわかりになつておるならば、まず伺つておきたいと思います。

[046]
参考人(警視総監) 田中榮一
その5名の捜査につきましては、すでに事件として検事局の方に書類を送致いたしておりますので、大体において証拠その他もはつきりさせた上でやつておるものと私は考えておりますが、今お話のように被害者の調査がないということはまことにおかしな話でありまして、われわれもそういうことを今お聞きした以上は、さらにもう一回再調査をしてみます。それから硫酸びん3個については、これはおそらくあるかもしれません。あるとすれば、これは当然証拠物件として検察庁の方に送致しなければならないものでありますから、これも押収してあると思います。

それから民団側に山田公安主任外7名が行つて、ともに酒盛りに参加していたというお話ですが、これまた非常におかしな話でありまして、署の方では酒盛りに参加した事実は全然ない、こういうふうに私には報告しておられますから、さらに掘り下げてもう一回再調査してみましよう。

[047]
岡田春夫
あまり時間をとらないように能率を上げて伺いたいのでありますが、先ほどの御報告を伺つておると、15日の夜にも民団並びに民戦に対して解散を要求して大体話がついたという話がありました。それからその前に13日にも、これは両方に解散をしてもらうように要求をして、警察側としては民団は解散したのだから、民戦も解散してもらいたいということを山田という公安主任が民戦に対して言つて来ておるわけです。ところが実質的においては解散をしなかつた。その証拠に先ほど警視総監から言われた通りに、すぐその直後に約40名の人が民戦の事務所を襲つて5人のけが人を出しておる。こういうような事件が起つておるわけです。しかもその15日の晩にも解散をしたと言いながら、そのあとで実際に2人のけが人を出しておるわけです。その名前はこの前もちよつと申しましたが、鄭石根というのと具永基という2人の人であります。この2人の被害者に対する加害者を実際に逮捕されたかどうか。この点が御報告によると必ずしも明確になつておりません。

それからそのあとで、先ほど座談的に警視総監がおられなかつたときに話をしたのでありますが、その後においても、単に相対する民団と民戦とのけんかだけの問題として、警視総監に扱つてもらいたくない。これは日本人たちにもずいぶんけが人が出ているのであります。

そのけが人の例を私ここで申し上げますが、16日の夜民団の事務所の前を通りかかつたとうふ屋がけがをしております。これはどういう名目でけがをされているかと言うと、とうふ屋が売つてまわつていると、お前は民戦のスパイだろうというので、突如なぐられた。

それから17日の朝、これまた牛乳屋さんであります。毎朝牛乳屋さんが牛乳を配るのはあたりまえですが、民団の事務所の前を通りかかると、これに対してもけがをさせられた。

また暴力団のジープが日本の婦人をひいて、そのために民国側が損害賠償12万円を請求されている。こういうような事実も起つております。その近辺がいわば非常に不安な恐慌状態に陥つているのでございます。ですから警視総監も御存じでしようが、足立区の区議会においても、これが問題になつて、本会議を開き、都議会においても警務委員会を開くというようなことで、これは新聞の上では伝えておりませんけれども、きわめて重大な問題として、あそこの半ば恐慌状態についてみなが注目している問題なのであります。こういう点についても現在のところ御報告がないのであります。

また21日にも夜9時半ごろに事件が起つておりますし、そのあと警察の方で警戒態勢を強めて云々と言つておられますが、実際にはその後の状態も何らかわりはないのであります。

27日にも事件が起つております。そのようにしてひんぴんとしてその以後においても事故が起つているのであります。こういう点についての御報告が全然行われておりません。しかもこういう暴力事件がこのようにひんぴんと起るならば、一連の関連の事件として、これはやはり勾留をして厳重にその関連の事項その他を調査して行くというのが当然のことではないかと思うのですが、最初の13日の問題だけは解決したから身柄は釈放して、在宅捜査のまま置いたんだというような程度では、根本問題についての解決に私はならぬと思うのです。こういうような事実について御存じがあるかどうか、もし御存じがあるならば、これについてはどういうような措置をとられておるか、こういう点もお伺いをいたしたいと思います。

[048]
参考人(警視総監) 田中榮一
お話の7月16日の拉致事件でありますか、これにつきましては現在2名を逮捕しておりますが、先ほど私から申し述べましたごとくに、まだほかに犯人がおるものと認めて事件を調査継続中でありますから、この点御了承願います。

それから16日の朝民団の前を通過したとうふ屋がなぐられた。それから牛乳屋がなぐられたというようなことは、私今初耳でありますので、そういうことがあるかどうか、さらに再調査をしてみたいと思います。

21日同じく27日の事件につきましてもまだ報告を受けておりませんから、これもさつそく調査をいたしてみます。私どもの考えといたしましては、双方の単純なけんかだとは絶対に考えておりません。これはもつと深刻な問題が背景にあるものと考えておりますので、事件の取扱いにつきましては、相当慎重なる態度で臨んでいるはずであります。

いずれにいたしましてもこうしたことがありますことは、付近の一般の何ら関係のない住民に非常に不安動揺を与えることでありますので、こういう点から考えても早急にこの禍根を一掃して、事件を円満に解決することが急場の問題であると思いますので、ただいま最善の努力をいたしております。

[049]
岡田春夫
捜査を願うためにも、具体的に簡単に申し上げておいた方がいいと思いますが、7月27日の事件というのは、午後9時半ごろ本木町の関原通のそば屋つばめ屋で3人の者が暴行されている、康賞キ、林炳元ほか1名、これに対してもそれぞれ全治1週間の傷害が与えられている。そして現在のところいまだ犯人が逮捕されないで、そのままになつているようであります。

ところが、私この前の委員会においても申し上げたのでありますが、何か民団を擁護するかのごとく、半面民戦をたたきつけるかのごとき態度で警察側が捜査をやつておるのはけしからぬと申し上げたのは、そういうように民戦側にどんどん被害者が出ているのに、これに対する態度がほとんど行われておらない。たとえば16日未明の具永基に対する事件の場合にしても、民戦側の幹部からその加害者の住所まで教えているのに、そのままになつているという事実もあり、その半面けさなどは民戦がビラを張つただけで、そのビラを張つたことについて直接張つてない者までも巻添えにして現行犯で逮捕をしているのであります。民戦の場合に対してはその付近におつた者までも含めて現行犯で逮捕しながら、民団側は相当けがを与えながらもそのまま放置しておるということであるならば、これは明らかに民団に肩を持つた態度で捜査をやつておるとしかわれわれは考えられないと思うのであります。こういう意味でも警視総監として厳重にお調べ願いたいと思います。

それからお調べを願う関係上、一つ具体的な事実を申し上げておきますが、たしか7月18日か19日でございますが、足立区における民団の総会で、民戦の幹部13名の暗殺の謀議を行つております。そしてこの暗殺をやつた場合に200万円を出そうというようなことにまで及んだという話があります。これについてはもし必要であれば、私は証人を出してもいいのであります。その謀議に参加しておりました人の証人を出してもいいのであります。というのは、その相談が出ましたときにそういうようなことをやるのはきわめてよろしくないというので、民団の中のある幹部が、そういう暴力的な方法で問題を解決しようとすることには反対だといつて退場した人があるのであります。その人がはつきりその事実を知つているのであります。

こういう事実についても、先ほど警視総監は報告をされておりません。こういう事実を調査しなければ、この問題の解決が出て来ないのであります。そういう意味から、こういう点については、ぜひ厳重な御調査を願いたいと思います。前回の委員会において、この前後の関係を詳細に申し上げておりますから、委員会の速記録をとつて読んでいただけば、前後の事情がわかると思います。簡単に申し上げるならば、白骨団と称する暴力団体が、これを受取つているといううわさも聞いているのであります。ですから、こういう事実をもつと確かめていただかなければならないと思うのであります。こういう前後の関係は、民団の責任者に対して調べていただくならば、当然これは出て来るはずなのであります。そういう点もひとつ厳重にお調べを願いたいと思います。

それからまた、その後においてひんぴんとして、ただいま申し上げた13名の幹部に対して、幹部の家が個人的に夜半、夜夜中襲撃をされております。現在までに襲撃をされている人は、8人であります。これは単に足立区に限らず、東京都下の全地区にわたつて散在する13名の幹部に対してそういう襲撃事件が起つているのであります。こういう点なんかもぜひ調べていただかなければなりません。しかもこの襲撃の際に使つているジープの番号がわれわれの方でわかつております。これは新宿のナンバー5223であります。これは仮ナンバーです。こういう点をお調べになつたら、当然わかるはずなんです。

何だか私の方で今これを言つていると、自分で言いながら戸まどいするような感じがするのだが、私の方が詳しく知つていて、警視庁の方があまり詳しく知らないというようなことでは、どうもこれは警視庁というものも大して当てにならないのじやないかという感じがするのであります。どつちが調べる方だかわかないようで、もつとひとつ厳重にお調べを願いたいと思います。場合によつては、これは委員長に請求をいたしまして、西新井署の署長も参考人として御出頭願うような場合もあるかもしれませんが、まあきようのところは警視総監の調査に期待をいたしまして、私はこの程度に終えておきますが、現在のところわかつております点は以上の通りであります。やはり根本的にひとつこの問題については調べていただいて、13名の人が生命の危険にさらされることのないように、ひとつ根本的に御解決を願いたいと思うのであります。事件は事件として解決して、やはりそういうような危険の状態のないように特に要望いたしておきます。

[050]
参考人(警視総監) 田中榮一
御質問の御趣旨、御要望の点はよく了承いたしました。警察といたしましては、あくまで厳正公平な立場で、正しい態度で本件に対処いたしたいと考えております。またもし警察署の出先におきまして、かりにも今お話のような態度がありましたならば、これはまことに残念なことであります。これはただちに是正させるようにいたしたいと思いますから、どうぞわれわれを御信頼願つて、今後ひとつ捜査に御一任願いたいと思います。

[051]
岡田春夫
法務省の関係も、大体以上申し上げたので、事件の概略はおわかりになつたと思いますが、必要があるならば、またあとでいろいろと申し上げてもよろしいのです。しかしこれは速記をとめるということは別にして、いろいろな参考資料等も差上げたいと思いますが、そういうように事件としてはきわめて重大な事件でありますので、早急に措置を講ぜられるように強く要望いたしておきます。

[052]
参考人(警視総監) 田中榮一
いろいろの御覧よくわかりました。もしそういうような参考のいろいろな資料があれば、やはりちようだいした方がいいと思います。それによつて十分調査いたします。



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